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物流・運輸業界のEVトラック化の現状と課題とは?取り組み事例や補助金についても解説

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地球温暖化防止や大気汚染対策を目的として、世界中でEV(電気自動車)の普及が推進されています。日本も「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という目標を2021年1月に当時の菅総理大臣が表明し、国内自動車メーカーもEV生産に向けて強化を着々と図っています。しかし、EV化するのは私たちが普段利用する自家用車だけではありません。バイクやバスといった様々な車両にもEV化が展開されており、今回取り上げるトラック領域は、2022年は「EVトラック元年」と呼ばれるほど注目されています。
本記事ではトラックのEV化のメリット、課題、取り組み事例、補助金制度について解説します。

トラックEV化によるメリットとは?

日本の物流業界全体の市場規模はおよそ26兆円で、トラック運送事業はその6割を占める約16兆円の市場規模を有します(数値は平成30年度)。そのため、物流トラックのEV化の影響は非常に大きいものとなるでしょう。では、トラックEV化によるメリットはどのような点が挙げられるでしょうか?

トラックEV化の最大のメリットはCO2削減

国土交通省によると、2020年度における日本の二酸化炭素排出量(10億4,400万トン)のうち、運輸部門からの排出量(1億8,500万トン)は17.7%を占めており、物流・運輸業界の地球温暖化への影響は大きいと考えられます。EVは輸送時の二酸化炭素排出量削減に大きく貢献できるとされており、物流・運輸業界で多く利用されるトラックをEV化することは地球温暖化対策の取り組みの大きな一歩になるでしょう。
二酸化炭素排出と地球温暖化のイメージ

企業価値の向上・騒音対策などのメリットもある

近年、企業は事業活動だけではなく責任を果たすことを求められており、SDGsを意識した事業計画に取り組む事業者が増えています。EVトラックを導入することもその社会的責任を果たす取り組みの一つであり、企業価値の向上に繋がるでしょう。
また、物流・運輸業界は長年騒音問題を指摘され続けていました。EVはエンジン音を出さず、ガソリン車に比べ静かとされています。地球環境問題対策としてのEV化は、騒音問題の解決にも大きく貢献するでしょう。
高速道路走るトラックのイメージ

EVトラック導入事例

ここでは、物流・運輸業界の大手企業によるEVトラックの導入事例を3つ紹介します。

ヤマト運輸:量産型国産小型EVトラック500台導入を発表

ヤマト運輸株式会社は2022年7月29日に、量産型国産小型商用BEVトラックを500台導入すると発表しました。量産型の国産小型商用BEVトラックの導入は国内で初めてとのことです。ヤマト運輸では2050年温室効果ガス排出実質ゼロおよび2030年温室効果ガス排出量48%削減(2020年度比)に向けて取り組みを行っており、その主要施策の一つとして2030年までにEV20,000台の導入目標を掲げています。今回発表された500台は2022年8月10日から、首都圏である関東・中部・関西エリアを中心に全国に順次導入される計画です。

ヤマト運輸株式会社、国産小型商用BEVトラック「日野デュトロ Z EV」を導入

ヤマト運輸が導入を発表した国産小型商用BEVトラック「日野デュトロ Z EV」
引用:ヤマトホールディングス株式会社プレスリリース

佐川急便:ベンチャー企業と協力し7200台のEVトラック導入を発表

佐川急便は2021年4月13日にEVの試作車を発表しました。この車両はEVの企画・開発を手掛けるASFと2020年6月から共同で企画・開発を手掛けたものです。2022年9月から順次、首都圏などの都市部を中心とした佐川急便の営業所に納車される予定です。屋根はソーラーパネルを搭載し、走行用や非常時の電源として活用することができるそうです。

佐川急便がEVベンチャーのASFと共同開発する宅配専用EV

佐川急便が開発を発表した軽自動車仕様の宅配用電動自動車
引用:ASF株式会社公式WEBサイト

SBSホールディングス株式会社:ラストワンマイル物流でEVトラック本格導入を開始

SBSホールディングス株式会社は2021年10月13日に、京都市のEVスタートアップ企業フォロフライ株式会社のEVトラックをラストワンマイル事業で全面的に導入すると決定したことを発表しました。フォロフライが販売するEV車両は、1トンクラスのEVトラックで、同社が日本の安全基準で設計、中国のメーカーがOEM生産したもので、この生産方式によりガソリン車同等の価格で提供できるとのことです。

SBSホールディングスが導入を発表したフォロフライのEVトラック

SBSホールディングスが導入を発表したフォロフライのEVトラック
引用:SBSホールディングス株式会社ニュースリリース

トラックEV化に残された課題とは?

トラックをEV化することのメリットを挙げていきましたが、未だに解決されていない課題も多く存在しています。ここでは、トラックEV化における課題を2つ紹介したいと思います。

長時間にわたる充電

現在発売されている自家用車のEVでは、急速充電器を利用しても80k%まで充電をするのに30分かかり、普通充電であれば数時間以上かかります。一方、エンジン車がガソリンスタンドで燃料を満タンにする時間は3~5分なので、比較すればとても時間を要することがわかります。
多くの荷物の積載や、長時間稼働するトラックの走行用バッテリーも大容量になることが考えられ、充電時間は運用上の課題となりそうです。
充電中のEVトラックのイメージ

車両の導入コストの高さ

一般に、EVはバッテリーを搭載していることからガソリン車と比較して本体価格が高くなってしまいます。ガソリン車(普通自動車自家用車)が100~300万円で新車を購入できる一方、EV(普通自動車自家用車)の本体価格は約300~400万円なのでかなり高いことがわかります。
EVトラックも同様に導入コストが、運送事業者がEVトラックを導入する際のハードルとなることが考えられます。

脱炭素社会の実現におけるEVシフトの重要性と実現方法について詳しく解説する資料をダウンロードいただけます。

資料ダウンロード

課題解決のための取り組み2選

物流・運輸業界や国・行政機関はこれらの課題を解決するために様々な取り組みを行っています。ここでは2つ紹介したいと思います。

カートリッジ式バッテリー規格化・実用化を検討している

ヤマト運輸は、長い充電時間を要することや充電によって物流のダウンタイム(車両や荷物が止まる時間)が生まれてしまうこと、加えて充電タイミングが車両の稼働時間帯に集中することといった課題を解決するために、着脱・可搬型のカートリッジ式バッテリーの実用化に向けた検討を開始しました。

ヤマト運輸が発表したカードリッジ式EVバッテリーのイメージ

ヤマト運輸が発表したカードリッジ式EVバッテリーのイメージ
引用:ヤマトホールディングス株式会社プレスリリース

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環境省はEVトラック導入に利用できる補助金を出している

環境省はEVトラックをはじめとする環境配慮型トラック・バスの導入及び電気自動車用充電設備の設置に要する経費の一部を補助する「令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業)」という補助金を出しています。
補助金の額は、同規模かつ同等仕様の2015年度燃費基準に適したディーゼル車の価格とEV車の価格との差額の2/3となっています。
ほかにも、充電設備やその工事費などで補助金額が決まっています。ただし、各年度の受け付けは予算がなくなり次第終了するため、早めの準備が必要です。
当該補助金について(外部リンク)>>> https://ataj.or.jp/efv-f_truckbus_r4/

「令和4年度二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業)」

環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業
引用:公益財団法人日本自動車輸送技術協会HP

EVトラック導入で環境保護・改善に貢献!

多くの課題が残されていますが、課題解決に向けた取り組みがすでに多く存在しており、トラックが全面EV化する未来はそう遠くありません。多くの自動車メーカーがEVトラック導入を本格化させることが予想されます。物流・運輸業界も補助金制度の後押しがあるため、EVトラックを導入する企業が増えていくでしょう。

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